
1月の青年部会ではメンバーへのインタビューを実施しました。
第2回は前川さんです。インタビュアーは副会長の小松さんにお願いしました。
インタビューから熱い思いを聞くことができて、大変興味深かったです。
2年後の独立を見据え、専門性を磨くために再就職
ーどのような仕事をなされていますか?
昨年(2024年)の6月に、新卒で入った銀行を退職しました。独立をしようかと思っていたのですが、もう少し準備を整えた方が良いと考えて就職活動をすることにし、事業再生系のコンサルティング会社に再就職いたしました。実は、今日(2025年1月6日)が初出社でした(笑)
ーどのような経緯で、現在の就職先を選んだのですか?
私は銀行で法人営業をしていたのですが、独立を考えるにあたって、まだ自分の中で「専門性」と呼べるものが備わっていないと感じたんです。
自分が目指す水準と比べると、スキルやノウハウがまだ不十分だと判断したため、専門性を磨きたいと思い、現段階では就職することを選びました。
勤務先となる事業再生のコンサルティング会社の方から誘われて入社することになったのですが、将来の独立への足がかりとして好条件だったのです。
(中小企業診断士)協会の案件を含めて、別の仕事を並行して続けられるよう勤務条件にも配慮をいただけたのも、ありがたい話でした。
まずは2年という期限を念頭に、修行をするつもりです。
ー現代らしい「パラレルキャリア」ですね。
はい。独立に向けて、力をつけて、準備を整えていきます。
銀行員として17年間のキャリアを歩んで現在へ

ー現在に至るまで、どのようなキャリアを歩んで来ましたか?
2007年に大学を卒業し、メガバンクに入行しました。法人営業、営業推進、営業企画など、17年間ずっと営業畑を歩んできました。勤務地は東京や大阪でした。
ーなぜ銀行員に?
大学は経済学部の経営学科だったのですが、私は「〇〇経済学」みたいなものを深く追求するというより、いろいろな企業のビジネスモデルを幅広く見る方が面白く感じていました。
なので、いろいろな企業と接点が持てる銀行業が、自分に合っているのではないかと考えて、銀行を選びました。
ーメガバンクの法人営業は、相当に稼げそうですね(笑)
はい。お給料は高かったですね(笑)
ー17年もお勤めであれば、社内でのキャリアも築いていたのでは?
そうですね。やりたい仕事をやらせていただきました。40歳になり、同期でも出世の早い人が管理職になったりする年齢にさしかかり、自分が今後どういうキャリアを歩むのかを考えるようになりました。
同じように管理職になっていくのか、本部で専門職になっていくのか。そのどちらも、あまり自分には合わないなという思いはもっていました。
ー銀行は社内政治すごそうですよね。「やられた、やり返す、倍返し」の世界ですから。
実際はそんなことなくて(笑)、結構みんな仲良くやっている感じですよ。とはいえ、職位が上がっていったら難しいことも増えてくると思いますが、私にはあまり向いていないと感じていました。
そこで、自分が中小企業診断士の資格を持っていたので、それを活かせば自分がやりたい仕事に集中できる、専門性を身につけることができる環境を作れるのではないかと考えたんです。
ー中小企業診断士の資格を取得されたのはいつですか?
今から17年前になります。
ー実は、ずいぶんなベテランだったのですね(驚)
学生時代から勉強をしていて、入行2年目に取得しました。私は、大学が経済学部だったのですが、あまり熱心に勉強をしてこなかったこともあって、これといったものが自分に残らなかったんです。
何か「勉強した証」みたいなものを残したいなと思い、経営学系の資格を探してみたところ、中小企業診断士というのがあることを知りました。在学中に受験し、一次試験を通過できたのですが、あいにく二次試験で落ちてしまいまして。就職後に再挑戦して、無事に合格できました。
ー中小企業診断士の資格はどのように活かしていますか?
副業が禁止されていたので、いわゆる「企業内診断士」のような活動はしていなかったです。就職したてだったこともありますし、やはり社会に出て仕事を覚えてくると、仕事が楽しくなります。銀行でも学ぶことがいろいろあったので、「診断士として」というのを意識することは、あまりなかったと思います。
資格を取得してすぐの頃に、大阪の中小企業診断士協会にも入会したのですが、活動ができず1〜2年ほどで退会してしまいました。
ですので、銀行で法人営業をする中で、資格取得に向けて勉強した知識を活かしたというのが実際のところかと思います。経営分析をするだけの知識があるという自負としては役だったかもしれませんね。
中小企業の経営者にとって、親しみやすく頼れる存在に

ー転職先での2年間をどのように過ごしていきますか?
事業再生系のコンサルティング会社に入社したので、そこでいろいろな経験を積んでいきたいですね。例えば、405事業(注:金融支援を伴う本格的な経営改善の取組みが必要な中小企業・小規模事業を対象として、認定経営革新等支援機関が経営改善計画の策定を支援し、経営改善の取組みを促すもの)への対応、(中小企業)活性化協議会からの受託案件など、再生支援をやっていきたいです。
また、スポンサーを探して運営するチームなども社内にあり、事業再生については多様な経験が得られるので、そのノウハウをしっかり得ていきたいです。
ーもともと事業再生に強い関心があったのですか?
決してそうではなかったです。今回の話は本当にご縁ですね。ありがたいことに、銀行時代は事業を再生させるような案件に携わったことがなかったんです。
昨年の夏からプロコン塾(注:兵庫県中小企業診断士協会が開催しているプロコンサルタント育成プログラム)に参加しているのですが、そこで事業再生をやっている先生方が多くいらっしゃることを知りました。いろいろお話を聞いていると、強いニーズがあるということも耳にしました。
加えて、中小企業診断士は財務や販路開拓、組織マネジメントなど幅広い分野の知見を求められますが、事業再生に携わるとそのあたりが満遍なくできるのだろうなと考えています。
すでにうまくいっている会社をさらに成長させるには、それ以上の何か特化した専門領域が必要かもしれませんが、事業を再生させるという段階では、そうした全方位の知識が試されるし、その経験を積むことができるだろうと思います。
2年後を見据えると、そうした経験がきっと役に立つだろうと期待しています。
ー2年後、独立した後にはどのようなビジョンをお持ちですか?
まず1つは事業再生ですね。この2年間で経験を得るでしょうし、その頃にはネットワークも拡大できていると思います。まずはしっかり足場固めをしていきたいですね。
あともう1つは、もともと銀行でやっていた事業承継や営業、資金調達などのノウハウを活かして、顧問先企業の支援をしていきたいですね。そういう意味では、中小企業としてのオーソドックスなスタイルをイメージしています。
ー具体的に、どのような方々に支援をしていきたいですか。
やはり中小企業の方々ですね。適切なアドバイス、判断、知識などをご提供していきたいです。私はずっと銀行員をやってきましたし、一応トップバンクと呼ばれているところにいたわけですが、他の金融機関も含めて、本来求められている伴走支援になかなかお応えできていないのが実情だと思います。
なので、銀行などの金融機関でカバーしきれないところで、中小企業の経営相談に乗れる存在になり、しっかりとフォローしていきたいです。
ー自分の強みをどのように認識されていますか?
よく金融機関の人にありがちな、上から目線みたいなものは良くないと考えています。
共感性を持って、相手に寄り添うようなコミュニケーションが取れる方だと思います。
ー確かに、お人柄が良いですものね。最後の質問になりますが、前川さんにとって「中小企業診断士」とは何ですか?
私にとっては、人生やキャリアの選択肢ですね。今回こうして転職したのも、その先に独立を見据えているのも、やはり資格があったからこそだと考えています。
かなり昔に取得しましたし、今から勉強して合格できるかというと、なかなか時間も取れずに難しいでしょう。中小企業診断士資格があったから、こうして多様な選択肢を得ることができたのだと思います。
ーこのページをご覧の方に、何かメッセージをお願いします。
経営者の方々は、あまり悩みを打ち明けたり、苦しい時に相談したりできる存在がいらっしゃらないかと思います。銀行などの外部はもちろん、社内にも弱みを見せづらいかと思います。
そうした時に、中小企業診断士をぜひ頼っていただきたいです。利害関係のない立場なので、気兼ねなく相談していただきたいですし、そこに真摯にお応えしていきたいです。