はじめに
「リスキリング」という言葉を耳にする機会が増えました。AIやDXの進展により、ビジネスの現場は日々変化しています。そんな中、社会人にとって“学び直し”はもはや特別なことではなく、キャリアを維持・発展させるための必須スキルとなりました。
この記事では30の資格を保有する“資格王” 坂東 大輔(株式会社エンジニアリングサムライ代表取締役)が、自らの体験を通して語るリスキリングの意義と、資格取得を通じたスキルアップの実践法を紹介します。

資格との出会いと挑戦の軌跡
筆者のキャリアは、まさに挑戦の連続です。技術士(情報工学部門)をはじめ、情報処理安全確保支援士、認定情報技術者(CITP)、中小企業診断士、ITコーディネータ、さらには通訳案内士(英語)など、IT・ビジネス・語学の三領域にわたって資格を取得。
ディープラーニング検定(G検定・E資格)まで網羅する姿勢は、まさにリスキリングの体現者といえるでしょう。
資格を取る過程では、何度も挫折や不合格を経験しました。技術士試験では、筆記試験で一度落ちた後に再挑戦し、最終的に合格を勝ち取ります。「試験は自分の弱点を教えてくれる鏡。諦めなければ、必ず成長できる」と筆者は考えます。
資格がもたらすメリットと価値
資格は単なる「肩書き」ではありません。筆者は資格を「セルフブランディングの武器」と捉えています。特にフリーランスや経営者にとって、資格は信頼性を可視化する最強のツールです。
また、資格を組み合わせることで“オンリーワン”の存在にもなれます。たとえば「技術士×中小企業診断士×通訳案内士×CITP」という組み合わせを持つ人物は、日本でも筆者ただ一人。専門性のシナジーを生み出すことが、資格の真価なのです。さらに、資格取得の過程そのものが、学び続ける姿勢を育てます。資格を通じて得た知識を実務に還元することで、自己成長のサイクルが回り続けるのです。

特に、ITコンサルタントを生業とする筆者にとっては、国家資格である中小企業診断士と技術士の組合せの相性は抜群に良いです。診断士の「経営学」と技術士の「情報工学」が両輪の柱となっており、片方のみでは成立しないのがITコンサルタントの仕事だからです。まさにITコンサルタントの本質は「診技一体」にあるのです。

勉強を挫折しないコツ
筆者が特に強調するのが「勉強を継続するための仕組みづくり」です。英検1級を突破するまでに10年かかった経験から、次のような工夫を紹介します。
- 勉強会を主催して強制力を生む
- 外国人と積極的に交流する
- 趣味を英語で楽しむ
- 定期的に資格試験に挑戦する
- 英語を使う環境を意識的に作る
「英語学習も資格勉強も、コツは“習慣化”に尽きる」と考えます。継続こそが最大の差別化戦略なのです。非凡な事を瞬時にマスターできるのは天才のみかもしれません。しかし「凡事を非凡なまでに蓄積する」のは凡人でも出来ます。

DX時代の登竜門「ITパスポート」
近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進役として注目されるのが「ITパスポート」資格です。AIやIoT、ビッグデータなどの基礎知識に加え、経営・法務・会計・プロジェクト管理といった幅広い分野を網羅。まさに現代の社会人全員が持っておくべき教養資格といえるでしょう。
筆者は「DX推進者の三種の神器」として、ITパスポート・G検定・E資格の3つを推奨しています。これらを体系的に学ぶことで、単なる“IT人材”ではなく、AI時代のリーダーシップを発揮できる人材になれます。
リスキリングの真の意味
リスキリングは「過去の自分をアップデートする行為」です。つまり、“Re(再び)”ではなく、“Rebirth(再誕)”の精神です。社会の変化に取り残されないためには、過去の成功体験に固執せず、自らを壊して再構築する勇気が求められます。
たとえばプログラミング言語の歴史を見ても、FORTRANやCOBOLから始まり、C、Java、Python、Kotlinへと進化してきました。変化に適応できた人だけが生き残る――ダーウィンの進化論は、まさに現代のキャリア形成にも通じます。

キャリアの節目で学び直す
筆者の人生を振り返ると、「サラリーマン→会社役員(取締役CTO)→個人事業主→社長(代表取締役)」と、節目ごとにリスキリングを実践してきました。立場が変われば求められるスキルも変化する。だからこそ、その都度“自分のOSをアップデート”する必要があるのです。

最後に:「リスキリングは魂の再生」
リスキリングとは、単なるスキル取得ではなく、自己変革の旅路です。最後に一言。
「過去の己をキリング(killing)せよ。学び続ける限り、人はいつでも生まれ変われる。」
変化の激しい時代だからこそ“学び直す勇気”が最大の武器になるのです。
執筆者

