青年部会副会長の岡本です。
「評価制度の導入支援」シリーズ第5回では、いよいよ制度運用の要となる 評価基準と判定方法の設計 について解説します。
前回(Vol.4)では、評価項目・着眼点・業績評価シートのつくり方を中心にご紹介しました。
今回はそこから一歩進み、
- 何に点数を付けるのか
- どうやって判定するのか
- シートをどう設計するのか
といった「制度を動かすための仕組み」に焦点を当てていきます。

どれほど立派な評価項目を整えても、評価の付け方が曖昧であれば、社員はすぐに不信感を抱きます。
「上司によって点数が違う」
「何をすれば評価が上がるのか分からない」
こうした声を防ぐために不可欠なのが、評価基準・判定方法・ウェイト設定の明確化 です。
評価制度は“仕組み”で動かさなければなりません。
それでは、進めていきます。
行動評価は着眼点評価・業績評価は達成率評価
まず、行動評価と業績評価の判定方法を決定します。
行動評価と行政期評価については、前回のVol.4で解説しましたので、そちらを参考にしてください。
行動評価は、前回ご紹介した 着眼点単位 で判定します。
私は評価項目を作るときに、できるだけ現場に近い内容にするため、いくつかの着眼点を作成します。
評価項目の「ルール遵守」だけでは、「自分たちにとってルール遵守とは何だろう」となり、どのような行動をすれば評価してもらえるのかが分かりにくいからです。
ただ、あまりに細かく設定すると、一人しか該当しないような内容になってしまうこともありますので、ある程度みなさんに当てはまるよう、抽象と具体のバランスを保って設定しています。
そうすることで、評価される側はどのように行動すればよいかが分かりやすく、評価する側は判定がしやすくなります。実務的にはここが一番難しく、正直100%納得できるものを作成したことがありません。もっと納得できるものを作りたいと日々思っています。
一方、業績評価は原則として 達成率ベース が理想です。
- 達成率100% → 標準評価
- 期待を上回れば加点
- 未達の場合は理由とプロセスも確認
業績評価は定量的に評価できるようにしますので、結果だけで判断できることが望ましいです。そのためには、目標管理を導入している会社では、最初の目標設定が重要となります。半年間頑張った成果が定量的に表現できないと、「これは目標達成したのか?」と判断に迷ってしまうからです。
目標管理は自分で設定できるため、従業員の能動的な行動を促進する効果はありますが、目標を低く置いて達成率を上げるような方法など、作為的に達成率を操作できてしまう面もあります。業績評価については、会社から与えられる目標にプラスして、目標管理を一部評価に入れるほうが良いかもしれません。
判定基準について
次に判定基準について決めていきます。
判定基準にはいろんな方法がありますが、一般的には5段階評価が多いと思います。私も実務では5段階評価になることが多いです。

5段階評価は真ん中がある評価方法なので、評価に自信がない場合などは「中央化傾向」と呼ばれる、「B」評価が多くなる恐れがあります。それを防止するために、評価研修で中央化傾向の説明をしたり、評価の基準について模擬評価を行って評価者の目線を合わせたりします。
私の場合、評価は「A・B・C」の3段階として、「B」の評価を3つに割って5段階としています。これにAよりも高い「A+」と、Cよりも低い「C-」を足して7段階評価にすることもあります。
いずれにしても、真ん中の評価があると、真ん中に寄りやすい傾向は否めません。
真ん中の評価を避けたい場合の基準として、4段階評価や6段階評価があります。

4段階や6段階では真ん中の評価はありません。ですので、評価者は着眼点に対して「できた」か「できなかった」か、どちらかの評価を出す必要があります。どちらかの評価を出すためには、普段の行動を観察しておかなければなりません。そうしないと根拠なく評価してしまった場合、後から行う「フィードバック面談」で説明ができなくなります。
会社によっては要望を受けて、真ん中のない評価基準を作成しています。ただ、結局「B+」に寄ってしまうなど、中央化傾向の基準が変わるだけになってしまうこともありました。なかなかメリハリのある評価は難しいですね。
最終的に着眼点の合計を行い、下記のような総合判定を出します。

総合判定について、私は60点を基準として点数化しておりますが、この点数は被評価者に見せないようにしています。というのも、同じB評価で「60点」と「59点」の差はなぜか?という問いに対して回答できないからです。たまたま評価点を合わせると1点差がついただけで、その差が具体的に何かを説明することは難しいため、英語表記の評価でフィードバックしてもらっています。「B」と「B+」の差であれば、フィードバック時に説明ができるかと思います。
業績評価についても同じく、60点を基準として判定してもらっています。

押さえていただきたいのは、目標を達成した場合は「B」になるということです。与えられた目標を達成することで、その等級としてふさわしい働きぶりと認められるからです。ここのすり合わせが不十分なことがあり、各評価が出そろったうえでの評価会議で「A」評価が連発することがありました。
また、目標管理をする際には、スタートの目標設定が重要です。ひとまず目標はそれぞれの従業員が作成しますが、必ず目標の妥当性を面談等で上司がチェックしてください。そのまま目標を決定すると、すごく簡単な目標設定をしているなど、作為的なものを防ぐことができないからです。
ある会社の従業員の例では、「時間通りに出勤する」が目標になっていることがあり、さすがに目標設定以前に当たり前のことだろうとなりました。それが会社の掲示板に貼ってありましたので、それを達成とみなしてよいのか、周りの同じ等級の従業員がどう思うのか、総合的に考えても検討の余地があると思います。
自ら目標設定する場合、どうしても簡単な目標にしてしまいがちです。それはどうしてもそうなることは、ある程度仕方がありません。難しい目標を立てて未達成で評価が悪くなり、処遇に影響してしまうなら、なるべく目標として認められる中で簡単な目標にしたくなります。
ですので、難しい目標についてはインセンティブを付けて促す仕組みなども検討してよいと思います。
業績評価では、目標の難易度を反映させる仕組みも有効です。
- 難:評価を加点(評点が1.1倍される)
- 並:標準(評点通りの評価)
- 易:再設定(評点×0.8倍という方法もある)
昔は簡単な目標に対して0.8倍など、評点を下げることも仕組みとして設計しておりましたが、やはり等級にふさわしい目標を設定してほしいという思いから、作り直してもらったほうが良いかと思っています。
これにより、「簡単な目標で高評価を取る」ことを防ぎ、チャレンジを促す制度になります。
目標管理では、目標設定を3~5個ぐらい設定してもらっています。ですので、最終的な判定はそれぞれの目標に対する判定の合計となります。下図のように行動評価と同じく、平均を取ることが多いです。

各評価者のウェイトについて
次に重要なのが ウェイト設定 です。
Vol.4では行動評価と業績評価についてのウェイト設計について記載しました。
ここでは一次評価者と二次評価者のウェイトについて考えます。
一次評価者と二次評価者のウェイトとは、2人の評価者をどう平均するかです。50:50や60:40のようなイメージです。
評価の判定は基本的に、現場に近い一次評価者の評価を尊重します。二次評価者はそれを補足する形です。
ですので一次評価者のウェイトが高まる傾向がありますが、ウェイトに関しては「50:50」にすることがほとんどです。
ただ、一次評価者の評価精度が高まってきたら、ウェイトを変更する仕組みは入れておいても良いかと思います。
シート設計は「運用しやすさ」を考える
制度構築で見落とされがちなのが、評価シートの作り込み です。
複雑なシートは、運用が止まります。評価は半年に一度行うことが多く、説明時に理解していても、実施時には忘れてしまうものです。
そのため、
- 入力項目はシンプルに
- 自動集計を活用
- 着眼点ごとに評価できる構造
といった工夫が欠かせません。
業績評価シートでは、
- 目標
- 取り組み内容
- 難易度
- 結果
が整理できるようにし、評価と育成が連動する設計にします。
評価制度というと「査定」のイメージが先行しがちですが、本来の目的は 人を育て、組織を強くすること です。
評価基準が明確になれば、
- 社員は何を期待されているか理解できる
- 上司は指導の軸を持てる
- 面談が建設的になる
といった効果が生まれます。そうなるための判定基準やシート設計などの仕組みづくりは、非常に重要です。
私もシートの設計は毎回「みんなが久しぶりに使用しても分かるように」を目指して考えています。
おわりに
今回は、評価制度における 評価基準・判定方法・ウェイト設定・シート設計 の考え方を整理しました。
評価制度は「つくった瞬間」が完成ではありません。運用しながら磨き続けていくことで、組織に根づいた仕組みへと進化していきます。
次回は、評価制度の運用についてお話ししたいと思います。
実際に運用するためのルールをすり合わせておかないと、評価者も慌てますし、被評価者もついてこれません。
このブログは自分にとっても振り返りになり、とても役に立っていますので、頑張りたいと思います。
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