組織を変える「レゴ®シリアスプレイ®」のご紹介

目次

1.はじめに

皆さんの会社において、「会議で意見が出ない」「部署間の連携がうまくいかない」「新しいビジョンが現場に浸透しない」といった組織の課題を感じていないでしょうか。

こうした組織内のモヤモヤを解決するためのユニークなファシリテーション手法として、日本だけでなく海外の企業においても広く取り入れられているのが「レゴ®シリアスプレイ®(LEGO®SERIOUS PLAY®、以下LSP)」です。

「なぜ、ビジネスの場でレゴブロックを使うのか?」と不思議に思われる方もいるかもしれません。かくいう私も、初めてこのメソッドに出会った際は半信半疑でした。しかし、本格的なトレーニングを経て認定ファシリテーターとなり、このメソッドの奥深さを学んでいく中で、このシステムは単なる場を和ませるためのアイスブレイクではなく、脳科学や心理学の理論に裏打ちされた画期的な組織開発手法であると確信するようになりました。

今回は、中小企業診断士、そしてLSP認定ファシリテーターとしての視点から、LSPの魅力と中小企業の現場における活用の可能性についてご紹介します。

2.ビジネスの場でレゴブロックを活用する理由

LSPは、1990年代半ばにレゴ社自身が激しいビジネス環境の変化に直面した際、「社員全員の知恵を引き出し、より良い戦略を生み出す方法はないか」と模索したことから開発されました。

その最大の特徴は、「手で考える(Thinking with your hands)」というアプローチです。私たちは普段、頭の中で考えることから動き始めますが、LSPでは与えられたお題に対して、まず手を動かしてレゴブロックを組み立てます。

人間の手と脳は密接に結びついており、指先を動かしながら立体的な作品をつくることで、座って議論しているだけでは使われない脳の回路が活性化します。私自身も研修で体験して驚いたのですが、ブロックを無心に触っているうちに、自分でも気づいていなかった潜在的な意識に自然と行き着くことがありました。この「自分でもハッとさせられるような発見」こそが、LSPの大きな魅力です。

3.「遊び」がもたらす心理的安全性

もう一つ、LSPの重要な要素が「遊び(Play)」の感覚です。ブロックを組み立てるという遊びの文脈が、参加者から「正解を言わなければならない」というプレッシャーや、失敗への恐れを取り除いてくれます。

これにより、役職や社歴による上下関係の壁が和らぎ、「心理的安全性」の確保された場が生まれます。普段の会議では発言をためらってしまうような意見であっても、レゴブロックの作品という「メタファー」を通すことで、角を立てずに素直に思いを表現できるようになるのが大きな特徴です。

4.「正解はない」を体感するアヒルづくり

LSPのワークショップでは、いきなり複雑な経営課題に取り組むのではなく、ブロックの扱いや表現方法に慣れるためのウォームアップから始まります。

その中でも、私が研修で体験して特に印象に残っているのが「アヒルづくり」のワークです。参加者全員に全く同じ形・色の6個のブロックを配り、「あなたが思うアヒルを作ってください」というお題を出します。

完成したアヒルをテーブルに並べてみると、ほぼ同じ形にはなりません。たった6個のブロックでも、その組み合わせは多岐にわたるからです。このシンプルな体験を通じて、「同じ情報やリソースを与えられていても、人の解釈や考え方は多様である」という前提を、参加者全員が理屈ではなくブロックを通した体感として共有できます。この経験は、その後の深い対話を生み出す強力な土台となったと感じています。

Fig. 6つのブロックでも形は多岐にわたる

5.全員が100%参加するための「4つのステップ(コアプロセス)」

LSPのワークショップは、ただ自由にブロックを組み立てるわけではありません。「全員が主体的にフルコミットする」ために、以下の4つのステップを繰り返しながら進めます。

①問いを立てる

ファシリテーターが「自社の本当の強みは?」といった、正解のないオープンな問いを投げかけます。

②モデルを組み立てる

全員が同じ量のブロックと同じ時間を与えられ、自分の考えをブロックの作品(モデル)として表現します。この時間は無言で行われ、各自が自分の考えをじっくりとブロックに込めていきます。

③ストーリーを共有する

完成後、全員が自分の作品に込められた意味(ストーリー)を語ります。ここで重要なルールは、質問を「話し手」ではなく「作品」に向けることです。「その赤いブロックは何を表しているのですか?」と作品を通して対話することで、お互いの考えを否定することなく、純粋な好奇心を持って傾聴し合えるようになります。

④振り返りと対話

全員のストーリーから共通点や新たな気づきを抽出し、グループ全体で認識を共有します。

Fig.組み立て中の筆者

Fig.参加者の作品と組み合わせます

6.中小企業の現場における3つの実践シナリオ

では、この手法は実際のビジネスシーンでどのように役立つのでしょうか。中小企業でよく見られる課題に対する活用例を3つご紹介します。

①経営理念・ビジョンの浸透

トップが掲げたビジョンが現場に届かない場合、LSPを使って全員で「自分たちの会社の未来像」を一つの大きな共有モデルとして構築します。各自が大切にしている価値観を持ち寄り、対話しながら統合していくプロセスを経ることで全員が心から納得し、当事者意識を持てるビジョンが完成します。

②部門間の連携強化

営業と製造など、部門間のコミュニケーション不全を解消する際にも有効です。各部門の現状をブロックで表現し、実際の業務の流れや情報の動きを紐やチューブのパーツで繋いで可視化します。参加者が「ここで情報が滞っている」という課題を客観的に把握できるため、「誰が悪いか」という非難ではなく、「この仕組みをどう改善するか」という建設的な議論が自然と生まれます。

③新規事業やアクションプランの創出

言葉だけで「新しいアイデアを出せ」と言われても、なかなか意見は出にくいものです。LSPでは、自社を取り巻く環境や新しい事業のアイデアをブロックで可視化します。「手を動かして考える」ことで柔軟な発想が引き出され、不確実な状況においても現場が納得して動ける、具体的なアクションプランを導き出すことができます。

7.最後に:組織の潜在力を引き出すために

LSPは「参加者の中に既にある答え(知恵)」を引き出し、目に見える形にするための優れたメソッドです。

トップダウンで正解を与えるのではなく、メンバー全員が手を動かし、フラットに対話しながら作り上げた戦略や指針だからこそ、現場のメンバーが腹落ちして動けるようになります。メンバー一人ひとりが主役となり、ブロックを通して納得のいく答えを創り上げる。そのプロセスが円滑に進むよう、安心できる場づくりと問いかけを通じて裏方からサポートするのが、ファシリテーターの役割です。私自身もLSP認定ファシリテーターとして、そうした場づくりに、これからも取り組んでいきます。

一方で、企業の皆様が抱える組織の課題は多岐にわたります。私たち「兵庫県中小企業診断士協会青年部」では、LSPだけでなく、若手診断士ならではの視点を活かし、企業ごとの課題に合わせた経営支援・組織開発に取り組んでいます。直近では生成AIの活用方法をご紹介するセミナーなども開催するなど、新しいテーマにも積極的にチャレンジしています。

「自社の会議をより活発にしたい」「チームの相互理解を深めたい」「これまでにない視点で経営課題を見つめ直したい」と少しでもご関心をお持ちいただけましたら、ぜひ当協会青年部メンバーまでお気軽にお声がけください。皆さまの組織に思わぬ突破口をもたらし、その一歩を一緒に踏み出せれば嬉しいです。

(執筆:森本 翔太)

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