ChatGPTをビジネスに活かす!プロンプトのコツと実践

ChatGPTにプロンプトで指示を出しビジネス課題を解決する男性のイラスト

「AIは便利だと聞くけれど、具体的にどう使えばいいのかわからない…」
そんな声をよく耳にします。そこで今回から複数にわたって、日進月歩で進化するAIの、ビジネスでの活用法をお伝えします。初回は最も有名な生成AIである「ChatGPT」を効果的に使いこなすための、「プロンプトのコツ」をご紹介します。

なぜChatGPTで意図した回答が得られないのか?

漠然としたプロンプトと明確なプロンプトの効果を比較する図

ChatGPTを使ってみて、こんな経験はありませんか?

  • 当たり障りのない答えしか返ってこない
  • 出てくる結果が毎回バラバラで安定しない
  • 時間をかけて指示をしたけど使える内容にならない

これらはプロンプト(指示の出し方)に原因があります。ChatGPTは非常に優秀なAIですが、人と同じように「明確で具体的な指示」で伝えなければ、期待したアウトプットを出してくれません。

例えば、「売上を上げる方法を教えて」という漠然とした質問では、一般論しか返ってきませんが、「製造業で従業員20名、年商2億円、主力商品は○○、競合が増えて売上が10%減少している当社が、3ヶ月で売上を回復するための具体的な施策を5つ教えて」と具体的に伝えれば、実用的なアドバイスが得られる可能性が高まります。

プロンプト作成の基本原則

プロンプト作成のコツ6つを示す図

効果的なプロンプトを作成するために、OpenAIのプロンプトエンジニアリングガイド1などを参考に、重要ないくつかの基本原則をご紹介します。

原則1:具体的で詳細な指示を与える

ChatGPTに対して指示が曖昧だと、回答も一般的で漠然としたものになりがちです。背景、文脈、目的、制約条件などを具体的に伝えることで、ChatGPTは意図を正確に理解し、期待するアウトプットを生成しやすくなります。

悪い例: 「マーケティングについて教えて」

良い例: 「製造業の中小企業向けに、SNSマーケティングの始め方を初心者でも理解できるよう、ステップバイステップで5つの手順に分けて具体的に説明してください」

原則2:役割を指定する

ChatGPTに特定の専門家やキャラクターなどの役割(ペルソナ)を与えることで、その立場に基づいた視点、文体、専門知識を含んだ回答を得ることができます。

悪い例: 「確定申告について教えて」

良い例: 「あなたは中小企業の税務に詳しい税理士です。
以下に示す状況を踏まえて、確定申告時に経費にできる可能性のある項目を、初心者向けにわかりやすく、具体的な品目例を挙げながら解説してください。」

原則3:区切り文字を使う

指示、文脈、質問、データなどを明確に区別するために、###---"""(トリプルクォート)などの区切り文字を使用します。これにより、ChatGPTがプロンプトの構造を正確に理解し、指示の誤解を防ぎます。

どの記号を使うかに厳密なルールはありませんが、情報を構造化することが目的です。例えば、指示全体を###---で区切り、その中の特定のテキスト(要約してほしい文章など)を"""で囲む、あるいは【条件】のように特定の項目を明示するなど、自分の中でルールを決めると一貫性が保てます。

区切り文字主な用途・使い分けの例
###、—指示の大きな塊やセクションの区切り
【】 、 #各項目の見出し(例:【条件】、# 条件)
“””複数行にわたる文章やデータ、例文などを囲む

悪い例: 「この製品紹介文を300字以内に要約してお客様向けにしてください。弊社の製品は自然言語処理技術を活用しており、チャットボット、翻訳、要約などの分野で応用されています…」

良い例: 「
【指示】
以下の製品紹介文を、お客様向けに300字以内で分かりやすく要約してください。

【文章】
“””
弊社の製品は自然言語処理技術を活用しており、チャットボット、翻訳、要約などの分野で応用されています…
“””」

原則4:手順やルールを明示する

タスクを完了させるための具体的なステップや、守ってほしいルールを箇条書きなどで示すことで、ChatGPTはより構造化され、一貫性のある回答を生成できます。複雑な要求ほど効果的です。

悪い例: 「競合製品Aと自社製品Bを比較して。」

良い例: 「以下の手順に従って、競合製品Aと自社製品Bを比較する分析レポートを作成してください。
ステップ1:製品Aと製品Bの主な特徴をそれぞれ3つずつ挙げてください。
ステップ2:両製品の「価格」「性能」「ターゲット顧客」の観点から比較分析してください。
ステップ3:分析結果に基づき、自社製品Bが持つ競争上の優位性を結論として述べてください。」

原則5:出力形式やスタイルを指定する

回答のフォーマット(箇条書き、表形式、JSONなど)や、文章のスタイル(丁寧語、フレンドリー、学術的など)を具体的に指定することで、後工程で利用しやすかったり、読者が理解しやすかったりする形で出力を得られます。また、意図した回答が得られない場合は、期待する回答の具体例をいくつか示すことも有効です。

悪い例: 「日本の主要な都市を教えて。」

良い例: 「日本の人口が多い都市トップ5を、以下のキーを含む表形式で出力してください。
・順位
・都市名
・都道府県
・人口(2024年時点の推定値)」

原則6:逆質問を促す

指示内容に曖昧な点や不足する情報がある場合、ChatGPTが勝手な解釈で回答を生成してしまうことがあります。これを防ぐために、「このタスクを実行する上で、もし情報が不足していれば質問してください」のように、ChatGPTに逆質問を促す一文を加えるのが有効です。

悪い例: 「新商品のプロモーション戦略を考えて。」

良い例: 「新商品のプロモーション戦略を考えてください。以下の情報をもとに提案をお願いします。もし不足している情報があれば、質問してください。
・商品カテゴリ:健康食品
・ターゲット層:30〜50代の健康志向の男女
・販売チャネル:オンラインショップ中心
・初期広告予算:100万円」

プロンプトの簡単な作り方

メタプロンプトの手順

前回ご紹介した原則に従ってプロンプトを作成すれば、意図した通りの的確な回答を引き出せる可能性が高いです。

しかし、「毎回原則を意識して長いプロンプトを作るのは、正直少し手間がかかる」と感じる方もいらっしゃるかと思います。

そこでおすすめしたいのが、「プロンプト自体をChatGPTに作らせる」という方法(メタプロンプト)です。メタプロンプトによりプロンプト作成の手間を大幅に削減し、かつ質の高いアウトプットを得ることができます。

メタプロンプトの実践

やり方はとても簡単です。ChatGPTに対して、プロンプトエンジニアの役割を与えを指定し、どのような目的のプロンプトが欲しいかを伝えるだけです。

以下は、実際にChatGPTに「中小企業向けのマーケティング戦略を考えるためのプロンプト」を作成させた例です。ChatGPTが作成したプロンプトをたたき台として、目的に合わせて編集・修正することで適切なプロンプトを簡単に作成できますのでぜひ試してみてください。

【依頼したプロンプト】

あなたはプロンプトエンジニアです。
中小企業向けの製品開発を考えるプロンプトを書いてください。
出力は区切り記号を用いてください。

【ChatGPTが生成したプロンプト】

あなたはプロの製品開発コンサルタントです。
中小企業向けに革新的かつ実現可能な製品アイデアを提案してください。
以下の条件に従って、各項目を丁寧に埋めてください。
【条件】

– 対象:従業員10〜100名の中小企業
– 業種:製造業・小売業・サービス業のいずれか
– 予算上限:500万円
– 技術水準:中程度(基本的なITツールの活用可能、専門的技術は外注可能)

【出力フォーマット】
■ 製品名: 企業名や業種に合ったネーミングをしてください。
■ 製品概要: 100〜200文字で簡潔に説明してください。
■ 主なターゲットユーザー: ペルソナまたは業種、利用シーンなどを具体的に記述してください。
■ 市場ニーズ・課題との関係: なぜこの製品が求められるのか、背景や社会的ニーズを含めて説明してください。
■ 差別化ポイント: 競合との差やユニークな特徴を3点以内で記述してください。
■ 初期開発ステップ(3〜5項目): 企画から試作までに必要な主要ステップを箇条書きで示してください。
■ 想定される課題と対策: 予想される技術的・運用的な障壁と、それに対する対応策を述べてください。
■ 想定予算内訳(概算): どの工程にどの程度の費用がかかるかをおおよそで示してください。

まとめ

今回は「ChatGPT」を効果的に使いこなすための「プロンプトのコツ」についてご紹介しました。

漠然とした質問では一般論しか返ってきませんが、効果的なプロンプト作成の基本原則を活用することで、期待通りの実用的な回答を得られる可能性が高まります。また、メタプロンプトを活用することでプロンプト作成の手間が省けます。

これらの技術を活用して、ChatGPTをより効果的なビジネスパートナーとして、日々の業務効率化や課題解決に役立てていきましょう。

AIは日進月歩で進化しています。次回以降も最新のAI活用方法をご紹介していきますので、ぜひお楽しみに。

*ChatGPT活用の注意事項

ChatGPTはとても便利なツールですが、出力された内容が必ずしも正確・最新とは限りません。そのため、ChatGPTの回答をそのまま鵜呑みにするのではなくチェックするようにしてください。特に、法律や税金などの専門的な内容については、専門家に確認することをおすすめします

  1. https://platform.openai.com/docs/guides/prompt-engineering/prompt-engineering ↩︎

(執筆:坂下 武志)