評価制度の導入支援 Vol.7
評価結果を「次の役割」につなげる仕組みづくり
評価制度は、評価を行って終わりではありません。評価結果をどのように昇給・賞与・昇格へ反映するのかを明確にして、初めて制度として機能します。
青年部会副会長の岡本です。
「評価制度の導入支援」シリーズ第7回では、評価制度を構築するうえで重要なテーマである「昇格要件の設定」について解説します。
前回(Vol.6)では、評価制度をスムーズに運用するための評価手順についてご紹介しました。
特に従業員が気になるのは、「どうすれば昇格できるのか」という点ではないでしょうか。
今回のポイント
- 昇格要件は評価結果と連動させる
- 中小企業では例外規定も必要になる
- 昇格は「能力を認めること」だけではなく「新たな役割を任せること」
- 管理職以外のキャリアとして、専門職コースも検討する
昇格制度とは何か
昇格制度とは、各個人の能力や適性、評価結果などを踏まえて、より上位の等級へ移行する仕組みです。
評価制度を構築する際、経営者からよく聞かれるのが、「結局どうなれば昇格できるのか」という質問です。
これは従業員にとっても同じです。評価制度を導入しても昇格基準が不明確なままだと、何を頑張ればよいのかが分からなくなります。
昇格要件を明確にする効果
- 会社が期待する人材像が分かる
- 将来のキャリアがイメージしやすくなる
- 評価結果への納得感が高まる
- 社員の成長意欲につながる
評価制度は人を評価する仕組みですが、昇格制度は人を育成する仕組みとも言えるでしょう。
総合評価を昇格条件にする
昇格要件として最も一般的なのが、人事評価の結果を活用する方法です。
私が構築する制度では、「B+以上を2回取得する」、または「2年連続で高評価を取得する」といった条件を設けることが多くあります。
一度だけ高い評価を取ったから昇格するのではなく、一定期間にわたって安定して成果を出しているかを確認するためです。
評価結果を確認する
B+以上などの条件を満たしているか確認する
所属長の推薦・本人意向・能力要件を確認する
昇格面談で最終確認する
ただし、中小企業では必ずしも制度どおりに運用できるとは限りません。
例えば、管理職の退職や異動によって急にポストが空くことがあります。その場合、制度上はまだ条件を満たしていなくても、会社として昇格させたいケースが出てきます。
制度は重要ですが、制度のために経営ができなくなっては本末転倒です。
そのため実務では、基本ルールを定めながらも、会社の状況に応じて例外的に昇格できる規定を設けることがほとんどです。
特に中小企業では、制度の公平性と経営上の柔軟性のバランスが大切だと感じています。
最低滞留年数を設定する
昇格要件を考える際には、最低滞留年数も検討します。
最低滞留年数とは、その等級に最低限在籍しなければならない期間のことです。
| 区分 | 最低滞留年数の目安 |
|---|---|
| 一般職 | 3年程度 |
| リーダー・監督職 | 4年程度 |
| 管理職 | 5年程度 |
単純計算すると、管理職になるまで20年程度かかる計算になります。もちろん、能力が高い人をどんどん昇格させたいという考え方もあります。
一方で、管理職になるためには知識や技術だけではなく、人間関係や組織運営なども学ぶ必要があります。そのため私は、ある程度の経験を積む期間は必要だと考えています。
ただし、こちらも絶対ではありません。A評価を取得した場合など、特に優秀な人材については例外的に昇格できる仕組みを設けることもあります。
評価以外の昇格条件も重要
昇格を判断する際には、評価結果だけではなく、所属長の意見や本人の意向も確認します。
私は所属長の意見は参考にしますが、多少早くても昇格させてよいと考えています。なぜなら、役職が人を育てることがあるからです。
最初から完璧なリーダーや管理職はいません。昇格後に悩み、経験を積み、周囲に助けられながら成長していく人も多くいます。
実際に私が関わった企業でも、リーダーに推薦された際に「私では務まらないと思います」と話していた方がいました。その方は、決してコミュニケーションが得意なタイプではありませんでした。
しかし、日頃から真面目に仕事へ取り組み、周囲からも信頼されていました。人手不足という事情もありましたが、経営者はその姿勢を評価し、リーダーへ抜擢することを決めました。
結果として、最初から大きな成果を出したわけではありません。ただ、一つひとつ経験を積みながら着実に力を付け、現在では経営者から厚い信頼を得る存在になっています。
また、人前で話すことが得意ではなく、一般的にイメージされるリーダータイプではない方が、最終的に会社で最も信頼される存在になったケースもあります。経営者の考えを理解し、それを現場で着実に実行できる人だったからです。
管理職に必要なのは、必ずしも明るさや社交性ではありません。
- 任せても安心できること
- 約束を守ること
- 継続して成果を出すこと
- 周囲から信頼されること
専門職というキャリアの選択肢
近年では、管理職になりたくないという人も少なくありません。責任が増えることへの不安や、自分はプレイヤーとして働き続けたいという価値観を持つ人もいます。
また、中小企業では役職の席数が限られています。管理職しかキャリアアップの道がない場合、昇格できない従業員のモチベーションが低下することもあります。
そこで私が提案することが多いのが、E職(エキスパート職・専門職)の設置です。
ただし、専門職は「管理職になりたくない人の受け皿」ではありません。
高度な専門知識や技術を習得し、その技能を後輩へ伝承していく役割が求められます。また、より高い専門性を追求し続けることも必要です。
一般職とは異なる責任を担う職種として位置付けることが重要です。さらに、E職から監督職や管理職へ進む道を残しておくことで、柔軟なキャリア形成も可能になります。
能力判定やスキルマップを活用する
昇格を判断する際には、評価結果だけでなく、昇格後の等級に必要な能力が備わっているかも確認します。
その際に有効なのが、スキルマップや能力判定シートです。製造業などでは、作業に必要な技能を一覧化し、どの程度習熟しているかを確認することで、昇格判断がしやすくなります。
また、必要な能力を見える化することで、従業員にとっても「次の等級に上がるために何を身に付ければよいのか」が分かりやすくなります。
一般職では作業遂行能力が中心となりますが、リーダー職や管理職では、メンバーを巻き込む力や、部署全体を動かす力が求められます。等級が上がるほど、求められる能力の質も変わっていきます。
昇格面談は必ず実施する
昇格候補者については、昇格面談を行うことをお勧めしています。評価結果や能力要件を満たしていても、自動的に昇格させるべきではありません。
昇格すると働き方が変わるからです。部下の育成や部署運営、目標管理など、新たな役割が求められます。
昇格面談で確認すること
- 本人に昇格への意欲があるか
- 新しい役割を理解しているか
- 部下育成や部署運営に向き合えるか
- 転勤・出張・緊急対応などの働き方に問題がないか
昇格面談は、単なる確認作業ではありません。会社が期待していることを伝え、本人が今後どのようなキャリアを歩みたいかを確認する重要な機会です。
おわりに
今回は、昇格要件の設定についてご紹介しました。
私は、昇格とは「新たな役割を任せること」だと考えています。
もちろん、これまでの能力や成果を認める意味もあります。しかし、それ以上に会社からの期待を示す行為です。
だからこそ、今できることだけではなく、将来どのような役割を担えるかという視点も重要になります。
昇格制度を適切に設計することで、従業員は自分のキャリアを描きやすくなり、組織としても人材育成を進めやすくなります。
次回は、評価制度を継続的に運用するためのメンテナンスや評価者研修についてお話ししたいと思います。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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